行雲流水

エッセイ

1食分の野菜

糖質制限を始めてから、自然と1日1食になった。体重も落ちて調子はいいのだが、正直1日1食では栄養面に不安が残る。1日に必要な栄養素が取れていないかもしれない。そこで私は、市販されている青汁と野菜ジュースを毎日欠かさず飲むようにしている。今は便利なもので、『1日分の野菜』と謳う野菜ジュースまである。これさえ飲んでいれば、栄養不足に陥ることはないだろう。

先日、スーパーで野菜ジュースを選んでいたら、『1食分の野菜』を謳う野菜ジュースを目にした。『1日分』ではない『1食分』である。目を疑った。「えっ、なんで1食分なの?」と。

『1日分の野菜』を謳う競合商品があるんだから、そこはほら、少し路線を変えて、《1日分のビタミン』とか『1日分のミネラル』とか、そういった違う角度から攻めたほうがいいと思うんだけど、なんで同じ路線で攻めた? しかもなぜ『1食分』という控えめな攻めなの? おじさん、よくわからないんだけど。

さらに熟考してみた。
ああ、わかった。あれだよねきっと、1パックのジュースで1日分の野菜が摂れるなんてちょっと信じられないと思っている人は必ずいるから、そんな人に向けて、『1食分』を出したら、「1食分なら真実味あるよね」みたいに思って手を伸ばしてくれる人がいるんじゃないか、そう考えたんでしょ。実はね私も、『1日分』はちょっと言い過ぎじゃないかって思っていた口なんだよね。おじさん、そういう背伸びしない企業姿勢、嫌いじゃないよ。

と、こんな会話をテレパシーを通じて野菜ジュースと交わした。野菜ジュースと心を打ち解けあったあたいは、その「1食分の野菜ジュース」を持ってレジに向かった。

飲んでみた感じ、『1日分』と『1食分』の違いはよくわからないが、少なからず、騙されている感はせずに飲めている。