行雲流水

エッセイ

2013-12-01から1ヶ月間の記事一覧

もう冬だと知った夜

広島市の歓楽街、流川。 流川を歩いていると、一人の老夫の後ろ姿が目に止まった。スーツとハットを着こなし、凛とした雰囲気を身に纏っていた。こんな人を紳士と言うのだろう。後ろ姿を見ただけで品位が伝わってくる。 私は興味を抱かずにはいられなかった…

妻がお気に入りのドライバー

妻は、ヤマト運輸のトラックが来ると慌ただしくなる。ドライバーに何かを手渡そうとするためだ。夏には炭酸ジュースを、冬には温かい缶コーヒーを振る舞う。ドライバーは3人ほどいて、日や時間によって担当が違う。妻は、その中でもK君がお好みのようだ。K君…

男の見分け方

「私、不倫してるんです」。騒がしい居酒屋の一角でそう打ち明けたのは、京子だった。京子は、大学を卒業してすぐに地元のA会社に就職。今年で3年目になる。遅刻や無断欠勤はなく、ハキハキとした性格で、同僚からも慕われている。だが、最近は元気が薄れ、…

小さな王様

小さな国に小さな王様がいました。王様は、昔から注目を浴びるのが好きでした。注目を浴びるために、たくさんの新しいことや珍しいことにチャレンジしました。異国の料理を流行らせたり、豪華なホテルを建てたり、珍しい果物を育てたり。そのどれもが上手く…