行雲流水

エッセイ

2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

孤独が好き

最近、孤独になっていない。平日も休日も常に誰かが傍にいる。孤独は寂しいとか、辛いとか、悲しいとか、そんな風に思われているが、私は孤独が好きだし、孤独なしでは充実を味わえない。独りで食事したり、独りで音楽を聴いたり、独りで出掛けたり、独りで…

秋雨

連日降り続ける雨。明日には雨雲と一緒に憂鬱な気分も過ぎ去るのだろうか。秋雨が冷やした空気が身体に沁みてきた。半年ぶりにヒーターの世話になる。遠赤の熱が冷えた身体に沁みてきた。半年ぶりにココアを飲んでみる。JAZZの『枯葉』を流したくなった。 ht…

水たまり

雨が激しく降り注ぎ、街には水たまりがいくつも現れていた。細い一本道、大きな水たまりが私の行く手を阻んだ。脇の石段に登り、よけて渡る。知らないサラリーマンも私に続いた。私とサラリーマンが石段に登っている横で、一人のOLが水たまりの上をバシャバ…

風みたいな奴

煙草が切れたので、弟に煙草を分けてもらおうと自分の部屋から2歩先にある弟の部屋へ行った。部屋のドアを開けると、見ず知らずの男がまるで自分の部屋にいるかのような佇まいでソファーに座り、煙草を吹かしている。歳は自分と同じぐらいに見えた。目が合う…

恩送り

深夜の駅のホーム。俺はただぼーっと二本のレールを見ていた。服は汚れ風呂には二週間以上入っていない。髭は伸びっぱなしで、その風貌はホームレスそのものだ。いや、もうホームレスと言っても過言ではない。借金で家と家族を失い、1ヶ月前から公園で寝泊ま…

月明かりの下で黒ネコと隠れん坊

月明かりの下に黒ネコが一匹。物影に身を潜め、人が通り過ぎるのをただじっと待っている。全身まっ黒で物影に隠れているのだから、見つかるはずがないと黒ネコはきっとそう考えているのだろう。だが、すぐにバレてしまう。きらりと光る二つの目が暗闇に穴を…

我が家の小さなペット

我が家では、小指に乗る程度の小さなペットを飼っている。ペットと言っても何か世話をするわけではない。何もせずほおっておいている。私はそいつが愛くるしく、見つけると心がやわらぐ。だが、妻はあまりそいつもことが好きではないようだ。ぴょんぴょんと…

最終電車で起きた、人間ドラマ

広島駅の最終電車車両内で出発を待っている時のことだった。出発まで5分少々ある。その間、ドラマが起きた。車内トイレに、一人のおじさんが入った。数秒後、おじさんが入ったことを知らずに、若い男性もトイレに入ろうとした。若い男はガチャガチャと音を立…

コラムの執筆依頼が来たので・・・

この間、地元の経済誌の記者から「カープを応援している社長のコラムコーナーがありますが、何か書きませんか?」と問い合わせがあった。「私、カープ全然詳しくないよ」と答えたら、「じゃ、『社長の休日』というコーナーがありますから、そちらはどうです…

妻を撮影

妻は写真を撮られるのが苦手だ。極力写真に写らないようにしている。私は時々、嫌がる妻にカメラを向ける。年に何枚かは残しておきたいからだ。撮られることを観念すると、妻はいつもポーズを取る。『ポーズ』と聞くと、慣れたように思うだろう。だがそれは…

母との思い出

俺は母に可愛いがってもらった記憶がほとんどない。父とはキャッチボールをしたり遊園地に行ったり旅行に行ったり、よく遊んでもらった記憶がある。だが「母親との思い出は?」と訊かれると、どうしても言葉に詰まってしまう。だが、一つだけ鮮明に覚えてい…

おさがり

悪いことは全て弟から教わった。俺の弟は、2歳離れているが俺よりもずっと早く大人の階段を駆け登った。喧嘩の仕方も煙草の吸い方も全て弟から教わった。今日は女の扱い方について講義を受けている。弟はソファーに座り、俺は正座してメモを取っていた。「・…

二人の夢

「盛田に会いに行ってみるか」。そう提案したのは、柳田だった。俺と柳田は車に乗って移動しており、盛田の家の近くをたまたま通りかかったところだ。「おぉ、それいいね。俺、数年あいつに会ってないわ」と返事をすると、柳田はすぐに携帯を取り出し、盛田…

私の手料理

私は、私の手料理を美味しく食べる旦那を見るのが大好きだ。毎晩、腕によりをかけて作っている。旦那も喜んでおり、お腹がぽっこりと膨れあがるまで食べてくれる。もう充分に肥えてしまい、メタボの一つの指標であるウエスト85cmはゆうに超えている。私はそ…

貸した金

「永井の奴、貸した2万円返してこないんだよな」。俺は弟に愚痴った。人に貸した金の話を他人にするのは、あまり良くないと思っていたが、あまりにも永井の梨の礫な態度に苛立ち、つい愚痴ってしまったのだ。弟は「ふぅ~ん。あぁそう」と返事しただけでさ…

そういうことか 2

「正俊、近所迷惑になるから止めなさい」。母親は迷惑そうな顔をして弟に注意をしていた。弟は「あぁ、分かったようるせえなぁ」と不機嫌そうに答えている。まぁ、いつものことだ。弟は単車を走らせるのが好きで、毎晩のようにうるさいコールを切りながら走…

そういうことか 1

「正俊、近所迷惑になるから止めなさい」。母親は迷惑そうな顔をして俺に言う。「あぁ、分かったようるせえなぁ」。俺は不機嫌そうに答えた。母親が止めているのは、俺が単車に乗ってコールを切ることだ。俺の家は住宅街にあり、改造したマフラーでコールを…

とんかつ定食

「昨夜未明、○○市○○町の民家で殺人強盗事件がありました」。TVから流れてくる暗いニュースを、いきつけの定食屋でとんかつ定食を食べながら見ていた。この店は古びたシャッター街にある定食屋だが、もうかれこれ20年以上通い続けている。「まったく、最近は…

SNS

ここは、とある地域の有名なレストラン。加奈子と真弓はランチをしに来ていた。カシャ。加奈子はiPhoneのカメラで運ばれてきたランチを撮影してSNSに投稿する。すぐにたくさんの反応が返ってきた。それを確認してからランチを食べ始める。毎度のことだ。 一…

じゃれているだけ

2011年7月20日村上タケルは亡くなった。享年14歳。死因は飛び降り自殺だった。遺書は見つかっておらず、部屋からは無数の落書きや破れのある教科書やノートが出てきた。また、以前からタケルの眼鏡はよく壊れ、靴も度々紛失している。あれはいじめだったので…

臓器売買

俺は今、とある東南アジアの高級ホテルのbarで、一人カクテルを飲んでいる。今月は仕事の調子が良かったので祝杯をあげているところだ。俺の仕事は、この国の闇組織から臓器を仕入れ、それを日本人に売ることだ。臓器はいくらあっても困らない。日本人はいく…

募金

「募金をお願いします」。駅の外は、通行人に募金を呼びかける若い男女10名の声が響いていた。冬の寒さが身に染みる一月中旬のことだ。正確な日にちは覚えていない。彼女らから5mほど離れた場所に青いベンチがあり、私はそこに座って彼女らをじっと見つめて…

男の偽りと女の嘘

顔を整形した。女に復讐するために。俺は容姿が悪く、モテたためしがない。モテないだけならまだいい。女からはまるで汚物に触れるかのように接せられ、卑下され続けてきた。俺を蔑んできた女が許せなかった。整形してからまるで人生が変わったようだ。パー…

パーティーのやり過ごし方

普段、パーティーには出席しないが、付き合いなどで行くことがまたにある。パーティーはバイキング形式が多い。私は人見知りのため、一人でビールを飲み、一人で食事をする。並べられたおかずを盛っていると、後ろから「お久しぶりです」と、知らない人から…

殺し屋の信条

俺は殺し屋。金さえもらえれば誰だって殺す。どんな仕事も断らない。それが俺の信条だ。 今日は川西という依頼人から受けた殺しの仕事がある。なんでも村上という人間を消してほしいんだとか。何か恨みがあるのかもしれないが、まぁ、動機など俺には関係ない…

パンツのゴムと現実

UNIQLOでパンツを4枚買う。今回もMサイズだ。以前より太ったので、正直少しきつい。だが、サイズアップは、なんだか負けたようで嫌だ(何と戦っているんだ?)。 数日後、買ったパンツを履いてみた。4枚とも同じMサイズだが、きつさが違う。緩いのときついのが…

UNIQLOで靴下を買えず・・・

妻がUNIQLOに行く際、私も付き合う。私は買い物カゴに靴下を入れる。最近、靴下の爪先が薄くなってきたからだ。妻が「今日は安くないから駄目」と言うので、しぶしぶ元あった場所に戻す。UNIQLOに行くたび、同じ台詞を言われ、靴下が買えずにいる。あれから…

タピオカとの格闘

先日、あるカフェでタピオカ入りの飲み物を注文した。実は私、タピオカが好物だ。あのぷにゅぷにゅとした食感がたまらなく好きだ。まるで、男性が大好きな女性の○○○○を彷彿とさせる。 それはともかくとして、私はタピオカ入りの飲み物を注文した。大抵この手…

「この人」と「この子」

妻は、電化製品を「この人」と呼ぶ。たとえば、パソコンを長時間使っていると、「この人、今日長く働いているから、休ませてあげて」とお願いしてくる。それを聞いて私はパソコンを一旦閉じる。 妻は、昆虫を「この子」と呼ぶ。 たとえば、家の中に虫が入る…

バンドを誘いに行ったらバイクが盗まれた

(今朝見た夢がやたらとリアリティがあって面白かったので書き残すことにしました)以下は、夢の中の話です。 仕事が上手くいかなくなった俺は、少し離れたデニーズでバイトをすることになった。一番忙しい昼からの3時間、特別にバイトを体験させてもらった…