行雲流水

エッセイ

妻は捨てられない

うちの妻は物が捨てられない。捨てられないどころか、好んで物を貯めようとする。デパートやスーパーの買い物袋は100枚以上溜め込み、本棚に収まり切らなくなった本類は300冊を優に超え、蔵っているロフトが今にも崩れ落ちそうである。安くなった食材があれば、必要以上に買い込み、何度も腐らせてきた。対照的な性分である私は、物が溢れている生活空間はストレスそのものである。改善するよう何度も求めてきたが、一向に治らない。もう半ば諦めている。

「アイスクリームが切れたから、いくつか買ってきておいて」と夜の散歩中に妻から電話があった。24時間空いているスーパーに立ち寄り、アイスクリームを買って帰宅。妻はもう寝ていた。一人、冷凍庫の中にアイスクリームを入れようとしたが、ぎっしりと詰まっていて中々入らない。「くそ、一体どんだけ食材を詰め込んでいやがるんだ」とブツブツ言いながら、仕方なく冷凍庫を整理しはじめる。中身を取り出したら、保冷剤がいっぱいに入った袋が出てきた。この保冷剤、冷凍庫の4割近くを占めていた。