行雲流水

エッセイ

ビラ配りの女性と冷たい風

初雪の降った翌日、私はぷらぷらと街に赴いた。人通りの多い交差点に差し掛かると道行く人にビラを配っている女性がいる。いつもはビラなど受け取らない私だが、こんな寒いなかビラ配りをしている姿に心を動かされたのか、ビラをもらってもいいと思えた。近くを通ってあげよう。素知らぬ顔をしてビラ配りをしている女性の横を通る。声をかけてビラを差し出してきた。私もポケットから右手を出した。だが女性は、私の顔を見てビラを引っ込めてしまった。何故だかわらない。女性向けのビラだったのか? 私の右手が虚しく行き場を失う。
冬の青い風が頬と手を冷たく刺した。