行雲流水

エッセイ

おもちゃのてっちゃん

私には、3つは離れた親戚てっちゃんがいる。
てっちゃんが小学4年生の頃、彼の母親から相談を受けた。「てっちゃんのちんちんが小さいの。見てあげて」。てっちゃんも恥ずかしながらも、どうやらそのことを悩んでいるようだ。私はてっちゃんと一緒にトイレに入り、ちんちんと見てあげた。確かに小さい。小指の第一関節ぐらいしかなかった。お母さんに「まぁ、まだ小学生だし、もう少し様子を見ましょう」と気休めのアドバイスをした。

時は経ち、てっちゃんは中学1年生になった。
てっちゃんからまた相談受けた。「まだ小さい」と。私は「ちんちんを大きくすることは諦めな。ちんちんは女を気持ちよくさせる一つの道具でしかない。ちんちんが駄目なら、おもちゃを使えばいい」と助言した。さらに私は、自分が持っていたコケシ(未使用)をてっちゃんにあげた。「これさえあれば大丈夫」と言い。コケシを手にした、あの時のてっちゃんの瞳。まるで、人生の道が開けたような輝きを放っていた。今でも昨日の出来事のように覚えている。

3年後。
私の住む町にある噂が流れてきた。大人のおもちゃを鬼神の如く操る高校生がいると。彼はこう呼ばれていた。「おもちゃのてっちゃん」。その名は市外にまで轟いた。

肩で風を切るてっちゃん。街ゆく人は、彼を見ては道を開ける。幼女が「あっ、おもちゃのてっちゃんだ」と叫んだ。お母さんは「めっ、見ちゃダメ」と目を遮った。

私は、正しいアドバイスをしたのだろうか。正直、分からなかった。だが、数年ぶりに会ったてっちゃんを見て、確信した。私は正しかったと。だって、あんなにも自信にあふれる男の顔になっていたのだから。