行雲流水

エッセイ

いつかはホームラン

男の子は小学生に上がる頃、人生で初めての二者択一を迫られる。「コロコロコミック」か、それとも「コミックボンボン」か。私はボンボン派だった。この時点で、女性の大半は話に付いて来れないだろうが、そんなことは関係ない。大多数の男性に通じればそれでいい。

ボンボン派だが、実はコロコロも愛読していた。昔からの浮気性である。当時、コロコロではギャグ漫画『かっとばせ!キヨハラくん』が連載されていた。主人公の「キヨハラくん」は、そう、プロ野球選手の清原和博がモチーフである。当時の私にとって、「きよはら選手」とは、コロコロコミックのキヨハラくんのことだった。

中学生に上がる頃には、私はコロコロもボンボンも卒業していたため、連載がどれだけ続いたのかは知らないが、3年前の2014年に続編にあたる『コロコロアニキ』がスタートするというニュースがネットから流れてきた。「あぁ、キヨハラくんは、今の時代でも健在なのか」と、懐かしく思うと同時に嬉しい気持ちにもなった。

だが、しかし、である。
ご存知の通り、主人公のモチーフとなった清原和博が昨年逮捕された。私の脳裏によぎったのは、キヨハラくんである。ボールを打っていたのが、薬を打つようになったというオチで休載になるのかと思った。だが、私の心配を余所に、神妙な最終回(代作『いつかはホームラン』)を迎えて休載となった。

人生は分からないものである。時代の寵児になった人でさえも、人生をコロコロと転がり落ちていくのだから。キヨハラくんの最後の台詞は、「さてと...。元気出して、やろうかね...」だった。いつかまた、再起した「きよはら」を見てみたい。そして私もいつか、人生のホームランを打ちたいものである。「人生送りバント」からの脱却を。