行雲流水

エッセイ

学校へ行こう

後4日でバレンタインデーである。この日を澄ました顔で過ごす男子ほど、実はチョコが欲しくて堪らないものである。実は私、そこそこモテたほうだったが、ことバレンタインデーに関しては、いい思い出よりも、嫌な思い出のほうが印象強く残っている。

中学1年生のときである。とある同級生からチョコを渡された。全くの対象外の女子だったのだが、そんなことはさして問題ではない。問題だったのは、場所と時間と渡し方だった。下校時間、皆が必ず通る道の真ん中で、上級生を三人連れて渡してきたのだ。恥ずかしかったのと、受け取らないわけにはいかない状況下で渡してきた行為に腹が立った。腹が立ったとはいえ、そんな状況下、受け取らないわけにはいかない。「ありがとう」と一言お礼を言い、チョコを受け取った。

当時のテレビ番組で、V6がレギュラーの『学校へ行こう』が放送されていた。中学生が学校の屋上から全校生徒に向かって何かを告白するという番組企画だった。誰かに向って謝罪する告白もあれば、愛の告白をすることもある。私はこの番組を見ながら、「こんな状況で告白されたら、たとえ嫌でも、『YES』って言うしかないだろ」と自分を重ねながら見ていた。NOなどと言えば、大衆の面前で女性に恥をかかせてしまう。嘘でもYESと答えるのが男というものだと思っていたし、今でもそう思っている。

男子生徒が愛の告白をした。「○○さんが好きです。付き合ってください」。女子生徒は「ごめんなさい」とあっさり却下。あぁ、女の子は違うのね、と思った次第である。