行雲流水

エッセイ

パーティーのやり過ごし方

普段、パーティーには出席しないが、付き合いなどで行くことがまたにある。
パーティーはバイキング形式が多い。私は人見知りのため、一人でビールを飲み、一人で食事をする。

並べられたおかずを盛っていると、後ろから「お久しぶりです」と、知らない人から話しかけられる。相手は私を知っている風だ。私は人の顔を覚えないので、おそらく私が忘れているのだろう。

「あぁ、お久しぶりです!」と爽やかな笑顔で応える。すかさず、「いつぶりでしたっけ?」と、さも顔を覚えているかのように返す。相手が「○○の時以来ですね~」と答えてくれる。でも思い出せない(アンタだれ~?)。
またしてもここで、さも思い出したかのように、「あぁ、そうでしたね。お久しぶりです。元気にしていましたか」と、笑顔を振りまく。
これは私が考え出した〝顔を思い出せない人”向けのトーク術である!

たわいもない会話をして、「じゃ、また」と言い、別れる。
そんな感じで、何人もさばき、また一人で食事をする。


寂しそうに一人食事をする私を見て、どこからともなく「一緒に食べませんか?」と、知らない人に誘われる(相手は私を知っている)。

私の脳内では初見の方だが、何度もお会いした人のように接する。
(顔思い出せない、名前なんて言うの?)と、たえず心が呟く。
それとなく会話しながら、相手が他の人と話が盛り上がるのを見計らって、自然と姿をくらます。

パーティーも終盤。ようやく帰れると安堵する。すると、「二次会どうですか?」と誘われる。女性に誘われるとNOとは言えず、しぶしぶ二次会に行くことになる。
二次会は盛り上がっている。私の温度は、一次会と変わっていない。この温度差が寒い。心が寒い。
結局、何かと言いわけをして、一時間ほどで二次会を後にする。


会場を出た瞬間、今日会った人の顔を忘れている。