行雲流水

エッセイ

SNS

ここは、とある地域の有名なレストラン。加奈子と真弓はランチをしに来ていた。
カシャ。加奈子はiPhoneのカメラで運ばれてきたランチを撮影してSNSに投稿する。すぐにたくさんの反応が返ってきた。それを確認してからランチを食べ始める。毎度のことだ。
一緒にランチをしている真弓が不思議そうに加奈子に聞いた。「なんで、ランチの写真を投稿するの?」。加奈子は少し困った顔をして答えた。「ん〜、なんとなく。反応があるとなんか嬉しいじゃん。そういう真弓だって、よく料理の写真を投稿してるじゃない」「そうだけど、私の場合はちょっと違うわ」「何が違うって言うの?」。真弓は目線を上に向け、微笑みながら答えた。「ん〜〜、ナイショ」。
 
その夜、真弓は手の込んだ手料理を作った。早速、iPhoneのカメラで手料理を撮影してSNSに投稿する。すぐにたくさんの反応が返ってきた。それを確認してから料理を食べ始める。毎度のことだ。
「加奈子、ダメなのよ。いいとこのレストランの料理ばかり投稿しちゃ。それじゃ、お高い女を演出しちゃって、男が寄り付かないのよ。逆に手料理はね、男が寄って来やすいのよ」。真弓は昼の質問に答えるように独り言を呟いた。
 
真弓が投稿した写真にコメントが付いた。いつも手料理の写真にいいねを押してくれる男だ。「いつも美味しそうな手料理の写真をアップされていますね。すごい家庭的で素敵だなと思います」。1分後、同じ男からメッセージが届いた。「よかったら、今度一度会いませんか?」。
真弓はほくそ笑みながら男のプロフィールなどを確認した。「あら、お金持ってそうないい男じゃない」。真弓は3時間ほど時間を置いてから返信のメッセージを送った。「お誘いありがとうございます。色々悩んで返信が遅れました。ごめんなさい。お誘いとても嬉しいです。もし、迷惑でなければ、よろしくお願いします」。
それから何度かメッセージのやり取りをして、会う約束を交わした。
 
メッセージを送った男は、「嘘のプロフィールや写真にまんまと騙された女が、また一匹釣れたわ」とほくそ笑んでいた。