行雲流水

エッセイ

そこにピスタチオがあったから

我が家のリビングにピスタチオの袋が置いてあった。すでに開封されており、妻が食べた痕跡がある。中身はまだ8割以上残っている。おそらく妻は、ゆっくりと楽しみながら食べているようだ。

私もピスタチオが食べたくなった。ナッツ系は私の好物なのだ。
数粒袋から取り出し、ほんの少し、つまんでみることにした。そう、確かにあの時、ほんの少しのつもりだった。

気がついた頃には、ピスタチオの殻だけが無残にも転がっていた。事の深刻さを悟った私は、殻だけを袋に入れ、何事もなかったかのように、元あった場所に戻した。

数日後。
ピスタチオの袋を持った妻は、私のいる部屋のドアをゆっくりと開けた。