行雲流水

エッセイ

小さな王様

小さな国に小さな王様がいました。
王様は、昔から注目を浴びるのが好きでした。注目を浴びるために、たくさんの新しいことや珍しいことにチャレンジしました。

異国の料理を流行らせたり、豪華なホテルを建てたり、珍しい果物を育てたり。そのどれもが上手くいき、国は今まで以上に豊かになりました。王様は、国民から慕われ、家来から尊敬されました。
気を良くした王様は、もっと国を大きくして、国民や家来を増やそうと考えました。そうすれば、もっとたくさんの人から慕われて尊敬されると思ったのです。そのためには、土地を増やして、お城も大きくする必要があります。王様は、さっそく税収を増やして国を大きくする段取りを始めました。それだけではなく、大きな国に見合う王様になるように、服装も食事も豪華で派手なものにしていきました。次第に、王様の生活にかかるお金は膨らんでいったのです。

国民も家来も文句を言いませんでした。なぜなら、それ以上の恩恵を王様から得ていたからです。
王様の派手な生活ぶりを見て、たくさんの王女が遊びに来るようになりました。王様は王女たちをもてなしました。王女たちはとても喜び、王様を褒め称えました。王様はますます気を良くして、さらに盛大に王女たちをもてなすようになりました。それにともない、税収も増えていきました。

少しずつ国民から不満が漏れ始めました。王様の命令に背く家来も出てきました。王様は怒りました。不満を言う国民、命令に背く家来は、処罰しました。死刑にすることもありました。それを見た他の国民や家来たちは恐ろしくなりました。
国民はさらに不満を漏らすようになり、王様の命令に背く家来もさらに増えるようになりました。王様は激怒しました。刑をもっと多く、もっと重くしたのです。

国から逃げす国民が一人、また一人と出てきました。税収もままならなくなり、家来にもまともな報酬が払えなくなりました。家来たちも逃げていくように国を去っていきました。王女たちも会いに来なくなりました。
そして最後に誰もいなくなりました。王様は言いました。「どいつもこいつも、ワシの偉大さがわからん馬鹿ばかりだ……」