行雲流水

エッセイ

雨の日の過ごし方

雨の日に咲く、傘という名の花。ビルの窓からその花を眺める。そこが一番綺麗に見えるからだ。しつこく降る雨も湿った空気も、傘花いっぱいの色景色を眺められるなら、そんなに悪いものでもない。


新調した傘を差して、自分も景色の一部になる。天気と裏腹に自分の気分は晴れやかだ。しばらく街を歩き、行きつけのカフェに入る。雨の日は必ず窓側に座る。

傘や車、アスファルトや屋根を雨が叩き音色を奏でる。外から響く雨の音(ね)が、いやおうなしに心を落ち着かせる。降りやまない雨を眺めながら、珈琲を飲む。一番心が休まる瞬間だ。何も考えず、ただぼーっとする。時折、読みなれない小説を開く。そしてまたぼーっとする。それが雨の日のカフェでの過ごし方。気がつくと本の紙はしっとりと湿っている。

帰り道、いまだに雨は降りやまない。道には水たまりができている。知らずに足を踏み入れる。じわりと冷たい感触が足に伝わる。雨は好きだ。だが、べしょべしょに靴が濡れるのはだけは遠慮したい。靴は服と違い濡れると色々と面倒なのだ。でもまぁ、仕方ない、と半ば諦めながら、雨の中を歩く。そんな日もあるさ。


あっ、また踏んだ。

降り続いた雨も、翌朝には晴れている。窓から明るい陽が差し込む。透き通った空気が清々しい。
雨の日の記憶は、空気の乾きと共に薄れていく。でもまたきっと空がぐずれば、雨が恋しくなるのだろう。たまぁにだけど。たまあに。

 

今週のお題「雨あめ降れふれ」より