行雲流水

エッセイ

冷水

アニメ『遊戯王』を何度かテレビで見たことがある。見るたび不思議に思っていたのだが、なぜ、カードキャラがダメージを負うたび、プレイターも一緒に「うわぁぁぁ」と叫び声をあげるのか。プレイヤーはダメージを受けていないはずである。この画を見ていて、ふと、ある日のことを思い出した。

7歳のとき、従兄弟の家に遊びに行った日のことである。3つ上の従兄弟は友達とドラゴンクエストをしており、その友達がコントローラーを握っていた。戦闘中、キャラクターがダメージを負うたび、「イテッ」「イッてーなー」と叫んでいる。RPGをまだしたことがなかった私は目を丸くてその様子を見ていた。そしてついに我慢しきれなくなって聞いてしまった。「痛くないでしょ?」。隣にいた従兄弟は苦笑しており、友達は「う、うん」と答え、それから黙ってプレイするようになった。その横顔は、何とも言えない複雑な表情だった。

思い返せば、興に水を差してしまった。それもかなりの冷水を。彼はきっと、キャラと一体感を持つことによって、ゲームを楽しもうとしていたに違いない。アニメ『遊戯王』のキャラクターたちも、ゲームを楽しむために叫び声をあげているのだろう。そう思うようになってから、少し優しい気持ちで遊戯王を見れるようになった。