行雲流水

エッセイ

出張マッサージ

「最近、ふくらはぎが張って辛いんだよね」と父に漏らしたら、父が贔屓にしているマッサージ店に出張マッサージの予約を入れてくれた。父のおごりである。父の担当者は、スタイルの良い若い女性だ。そのマッサージ師から身体をほぐしてもらっているのを私はいつも指を咥えながら見ていただけだったが、ついに自分の身体もほぐしてもらえる日がこようとは。踊り出した心が止まらない。いやいやいや、健全なマッサージである。下心はいかん。下半身は常にリラックス状態を保っておかなければならない。家のベルが鳴った。マッサージ師だ。平静を装い玄関のドアを開けると、そこにはいつもと違う女性が立っていた。小太りな、まぁ、んんん、だった。よこしまな心は一切湧かず、下半身はよくほぐれたのであった。