行雲流水

エッセイ

ふてくされる

親の私がいくら叱っても息子は聞く耳を持たない。走るなって言っても走るし、騒ぐなって言っても騒ぐ。「もう買わないって言っているでしょ」と言ってもおもちゃをねだってくる。

実際に人様に迷惑をかけた時、かけそうになった時は、語気を強めて叱りつける。すると息子はシュンとなり、ふてくされて口をきかなくなる。食べ物も口にしなくなる。

おそらく、言葉にこもった感情を息子は敏感に感じ取っているのだろう。叱ったのではなく、もしかしたら私は怒っただけなのかもしれない。

ふてくされた息子を抱きかかえながら、「さっきは怒ってごめんね」と謝る。ぷいっとして何も答えない。息子の顔を肩のほうまで抱き寄せ、頭を撫でる。息子も私の首に手をまわして強く抱きしめてくる。少しして腕から降ろすと、またいつものように奇声をあげながら走り回っている。