行雲流水

エッセイ

募金

「募金をお願いします」。
駅の外は、通行人に募金を呼びかける若い男女10名の声が響いていた。冬の寒さが身に染みる一月中旬のことだ。正確な日にちは覚えていない。
彼女らから5mほど離れた場所に青いベンチがあり、私はそこに座って彼女らをじっと見つめていた。


「恵まれない子供たちがいます。毎日十分な食事も食べられません。着る物も安全な住まいもありません。どうか、募金の協力をお願いします」。正午から夕刻にかけて、まっすぐな瞳で通行人を見つめ、声が枯れるまで訴え続けている。彼女らは来る日も来る日も訴え続けていた。
私はただじっと彼女らを見つめていた。いつまでも、いつまでも見つめていた。だが、ただの一度も目を合わせたことはなかった。


夕刻になり、彼女らは解散した。
すべての電車が終電を迎え、駅が閉まり始めた。私は彼女らの立っていた場所に身体を移し、ゆっくりと横になった。やせ細った私の身体には真冬の寒さはさすがに堪えたようだ。翌朝、私は凍死した。