行雲流水

エッセイ

寝るにはまだ早すぎる!

セミナー講師を務めたときの話だ。

セミナー開始1時間前に会場入りした私は、控室で待機していた。そこへ、今回のセミナーを企画した課長さんが挨拶に来られた。「いや~、どんな話を聞けるのか楽しみですよ」と、にこやかに仰ってくれた。私も笑顔で応えた。

定刻。司会者から講師紹介され、私は壇上へ上がる。
話始めて約5分。左端に座っている課長さんの顔が目に入った。あのにこやかな表情はもうどこにもなかった。コックリ、コックリと首は上下に動き、下がろうとする瞼を一生懸命に開けようと抵抗していた。
「あれ、課長さん、寝てるやないかい!? 始まってまだ5分じゃないか!」。3時間のセミナー中、寝た人は他にいなかった。

セミナーを終え、課長さんが挨拶に来られた。「いや~、いいお話でしたね」と、にこやかに仰ってくれた。