行雲流水

エッセイ

しおり

世の中には、不思議と紛失しやすいものがある。その筆頭に私が挙げるのは「しおり」である。

しょっちゅう紛失するため、私は普段、表紙をしおり代わりにしてページに挟むようにしている。序盤あたりには表表紙を、終盤あたりには裏表紙を、というふうにだ。ただ、中盤あたりになると、どちらの表紙からも遠く、無理に表紙を伸ばして挟もうとすると変なカタがついてしまうし、見た目もカッコ悪い。それに、なんだか本が可哀想に思えてくる。こんな時、無性にしおりを挟みたくなる。だが、こんな時に限っていつも見当たらない。

毎回毎回そうだ。期待を裏切られるたび、「あぁ、もうしおりには期待しまい。しおりはないものと思おう」と心に誓う。そしてなぜか、あの時の怒りを忘れた頃にひょこっと出てくるのだ。で、「あぁ、こんなところにあったのか。とりあえず捨てずに取っておこう」と考えてしまい、報われない期待を心のどこかに抱いてしまう。

喧嘩ばかりしているのに、なかなか別れない男女みたいだな、これ。