行雲流水

エッセイ

甘くて苦い

美容室でのカットを終えた帰り、息子が「ヤマダ電機でおもちゃ買いたい」とおねだりをしてきた。家には山のようにおもちゃがあり、妻とも買い与えすぎだから控えようと取り決めている。ここは、おねだりを拒否する方向で。「お家にたくさんおもちゃがあるからダメ」と説得を試みるも、そう簡単に折れないのが我が息子だ。何度も何度も「行こうよ」「見るだけ」と言いながら、私の手を引っ張る。ヤマダ電機についたらしめたもの、駄々をこねさえすれば買えると踏んでいることぐらい、こっちはお見通しである。「行こうよ」「ダメ」の攻防の末、ケーキ2つで手を打つことになった。我ながら甘いのか。
 
近場のカフェに入り、子供用にケーキを2つと紅茶を注文。
席につくなり、ケーキを食べはじめる息子。その間私は、ティーパックからエキスが出終わるのを知らせる砂時計を見ながらじっと待つ。砂が全部落ちた。紅茶をカップに注ぎ、口元まで運んだその時、「もう出よう」と息子。ケーキを全部食べ終わり、暇になったようだ。このまま息子をほおっておくとそのうちチョロチョロと動き回りだすのが目に見えている。もう一口だけ紅茶をくちにしてお店を出よう。少し苦い。