行雲流水

エッセイ

花火の音

ドン。ドン。ドォ~ン。

花火の音が我が家に響いた。どうやら、どこか離れた場所で花火大会が催されているようだ。音は聞こえて来るが、肝心の花火の姿は山に隠れて一切見えない。今頃、花火の打ち上げ場は見物客でごったがえしているに違いない。浴衣を着て、屋台の焼きそばなんか食べちゃって、眼上に咲く大きな光の花に目も心も奪われているのだろう。我が家に、花火の音だけ虚しく響く。

ほんの少しだけ夏を味わいたくなった。
イカを半分に切って食べてみることに。赤い実に点在する黒い種が心なしか少し花火に見えた。

花火の音は、今も我が家に響いている。