行雲流水

エッセイ

革靴の傷口と私の心

街に出掛けた。お気に入りの革靴を履いて。
道中、爪先を傷つけてしまった。傷口の大きさ分、私の心は落ち込んだ。

街に着き、革靴を購入したお店に立ち寄る。
「この傷、直りますか?」。
「たぶん大丈夫だと思います」。
店員は私の靴を預かり、奥に引っ込んでいった。
5分後、私の革靴は傷口が分からないほど綺麗になって戻ってきた。「綺麗になったね。良かったね」。そう心で呟いた。
それから靴の手入れやクリームの種類などについて色々と訊ねた。店員は親切に笑顔で答えてくれた。私はクリームを2種類購入してお店を後にした。

傷靴が綺麗になった分、いやそれ以上に心が上向き、軽快に街を歩いた。

帰宅後、購入したクリームを開けてみた。なぜか一つがブラックだった。